中学受験の偏差値は、模試ごとに受けている人の層が違うため、そもそも比較できない数字です。同じ学校でも、サピックスオープンでは低く、首都圏模試では高く出ます。どちらかが正しいのではなく、両方とも正しい別の物差しです。
秋にやるべきことは、換算表で数字を並べ替えることではなく、受け続ける模試を1つ決め、その模試が出す合格可能性の一覧だけで志望校を見ることです。
- 模試ごとに偏差値が違う仕組み(母集団の話)
- 換算表を鵜呑みにしてはいけない3つの理由
- 秋に「基準にする1つの模試」をどう選ぶか
- 判定の数字より先に見るべき3つの数字
- 秋の模試シーズンで保護者がやってはいけないこと
なぜ模試ごとに偏差値が違うのか
偏差値は、学力の絶対値ではありません。その模試を受けた人の中で、自分がどのあたりにいるかを示す数字です。したがって、受けている人の顔ぶれが変われば、同じ子でも数字は変わります。
中学受験の主要な模試は、実施する塾によって受験者層がはっきり異なります。最難関校志望者が多く集まる模試では、その中での相対的な位置が下がるため偏差値は低めに出ます。逆に、幅広い層が受ける模試では高めに出ます。一般にサピックスオープンが最も低く出やすく、日能研全国公開模試と四谷大塚の合不合判定テストが中間、首都圏模試が最も高く出やすいと言われます。
つまり、お子さんの偏差値が9月に55、10月に62と動いたとき、それが実力の変化なのか、受けた模試が違っただけなのかを切り分けないと、まったく意味のない一喜一憂になります。
偏差値は「学力の点数」ではなく「その日その集団での順位」です。集団が変われば数字が変わるのは、成績が変わったからではありません。
換算表を鵜呑みにしてはいけない3つの理由
ネット上には模試間の偏差値換算表が数多くあります。目安として眺めるのは構いませんが、志望校の決定に使うのは危険です。理由は3つあります。
理由1 換算は「平均的にはこうなる」という話でしかない
換算表は、多くの受験生の平均的な傾向から作られています。お子さん個人に当てはまる保証はありません。得意科目の配点が重い模試と軽い模試では、同じ子でもずれ方が変わります。
理由2 学校によってずれ幅が違う
最難関校ほど、模試間の差は小さくなります。一方で中堅校では、模試によって10前後の開きが出ることも珍しくありません。「この模試とこの模試は◯引けばいい」という一律のルールは存在しません。
理由3 出題の相性が数字に混ざっている
模試ごとに出題の癖があります。記述が多い模試、スピード重視の模試、思考力型の模試。志望校の入試問題と相性が近い模試で出た数字のほうが、実際の合否には近くなります。換算表は、この相性をまったく考慮していません。
注記:各模試が公表している合格可能性一覧(80%ライン・50%ラインなど)は、その模試自身の母集団をもとに作られています。模試Aの偏差値は、模試Aの一覧表でだけ見てください。これが最も誤差の少ない読み方です。
秋に「基準にする1つの模試」をどう選ぶか
9月から入試までは、志望校対策と過去問に時間を使う時期です。模試をあれこれ受け歩くと、その準備と復習だけで週末が埋まります。基準にする模試を1つ決め、それを継続して受けるのが原則です。選び方は次のとおりです。
- 通っている塾の模試を軸にする。春から同じ模試を受けていれば、偏差値の推移そのものが比較可能な唯一のデータになります
- 志望校の合格可能性一覧に、その学校が十分な母数で載っているかを確認する。載っていない、または受験者が極端に少ない学校は、判定の精度が落ちます
- 志望校が学校別の模試を実施していれば、それを併用する。出題形式が本番に近く、順位の意味が最も重くなります
- 毎月違う塾の模試を受けており、推移が追えない
- いちばん高く出た模試の数字を基準にしている
- 模試の復習が終わらないまま、次の模試を申し込んでいる
- 過去問を解く時間が、模試の準備に食われている
判定より先に見るべき3つの数字
返却された成績表で、多くの保護者が最初に見るのは合格可能性の判定です。しかし秋の時点で見る価値が高いのは、次の3つです。
そのうえで、志望校をどうするかの判断には期限を設けてください。受験校の最終決定は、一般に12月から1月にかけて行います。秋のうちは判定で志望校を動かさず、11月の模試までは「上げるための材料集め」の期間と位置づけたほうが、結果として選択肢が広がります。判定が振るわないときの考え方は模試でE判定・D判定…志望校は下げるべき?で詳しくまとめています。
今日からやること
- これまで受けた模試を書き出し、主催が同じものだけを並べて推移を見る
- 基準にする模試を1つ決め、入試までの受験予定を確定する
- 志望校を、その模試が出している合格可能性一覧の上で位置づけ直す
- 直近の成績表から、正答率6割以上で落とした問題を全科目分を抜き出す
- 抜き出した問題を、1週間以内にもう一度解き直す
保護者がやってはいけないこと
- 違う模試の偏差値を並べて「下がった」と言う。子どもは理由がわからないまま自信だけを失います
- 高く出た模試の数字を志望校選びの根拠にする。本番でその差は埋まりません
- 模試の判定を、子どもの目の前で他人と比べる。秋の数字は本人がいちばん気にしています
- 復習が終わらないまま次の模試を入れる。模試は受けた回数ではなく、直した量で価値が決まります
数字の読み方は、外から見てもらったほうが速い
成績表には、判定以外に多くの情報が載っています。ただ、その中のどこを見て、次の1か月で何を削り何を足すかを決めるのは、保護者だけでは負荷の大きい作業です。ご家庭で判断しようとすると、どうしても目立つ数字(判定と合計偏差値)に引っ張られます。
エスペランサアカデミーは、完全オンラインのプロ家庭教師センターです。学生アルバイトではなくプロ講師が1対1で担当し、模試の成績表を一緒に読み解いたうえで、志望校の出題傾向から逆算した学習計画を組みます。全国どこからでも受講でき、秋からの数か月という限られた時間の使い方を具体的にお示しします。
まとめ
- 偏差値は学力の絶対値ではなく、その模試の集団での位置
- 一般にサピックスオープンは低め、首都圏模試は高めに出やすい
- 換算表は目安どまり。学校ごとにずれ幅が違い、一律のルールはない
- 基準にする模試を1つ決め、その模試の一覧表の上だけで志望校を見る
- 判定より、科目のばらつき・正答率6割以上の失点・同一模試での前回差を見る
- 秋は志望校を動かさず、最終決定は12月〜1月に行う
※模試の実施回数・日程・判定の基準は主催団体や年度によって異なります。最新の情報は各模試の公式案内でご確認ください。

