海外にお住まいのご家庭から、「日本の勉強がこのままで大丈夫か不安」「補習校だけで足りているのか分からない」というご相談をいただきます。とくに帰国後の受験を考え始めると、現地の生活と日本の学習をどう両立させるかが大きな課題になります。
この記事では、時差があっても受けられる時間帯の具体的な組み方、補習校だけでは埋まりにくい部分、帰国のタイミング別にやるべきことを整理します。
結論
① アジア圏(時差1〜2時間)なら、日本の平日夜がそのまま使えます。
② 北米は「日本の早朝=現地の夕方」がぴったり合います。日本時間の朝7時は、ニューヨークの前日17時です。
③ 欧州は平日の時間が合いにくく、週末が現実的です。ロンドンの放課後16時は日本の深夜1時にあたります。
つまり「時差があるから無理」ではなく、地域によって使える時間帯が決まっているだけです。申し込む前に、その時間帯に対応できるかを必ず確認してください。
補習授業校だけでは埋まりにくい3つのこと
補習授業校は、現地校やインターナショナルスクールに通う子どもが、土曜日や放課後に日本語で授業を受けられる教育施設です。文部科学省によると、世界51か国・1地域に242校が設置され、約2万1千人が学んでいます。国内で使われている教科書を用い、国語を中心に、学校によって算数(数学)・理科・社会が加わります。
非常に価値のある仕組みですが、構造上どうしても手が届きにくい部分があります。
① 授業時間が絶対的に足りない
週1回・数時間で日本の1週間分を扱うため、進度は日本の学校より緩やかになります。国語中心の学校では、算数・数学が手薄になりがちです。
② 個々のつまずきに戻る時間がない
クラス単位で進むため、「小4の割合でつまずいたまま小6になっている」といった個別の穴は、そのまま残りやすくなります。
③ 受験を前提とした対策までは扱わない
補習校は学校教育の補完が目的で、志望校の出題傾向に合わせた対策までは行いません。帰国後の受験を考えるなら、別に手当てが必要です。
補習校をやめる必要はありません
補習校は「日本語で学ぶ習慣」と「同世代とのつながり」を保つ場として大きな意味があります。足りない部分だけを個別に補うのが、いちばん無理のない形です。
時差別・実際に受けられる時間帯の組み方
ここがいちばん知りたい部分だと思います。下の表は、日本標準時と各都市の時差から、現地の放課後(16〜19時)が日本の何時にあたるかを整理したものです。
表は横にスクロールできます →
| 都市 | 日本との時差 | 現地17時=日本時間 | 受けやすさ |
|---|---|---|---|
| 上海 シンガポール | -1時間 | 18時 | ◎ 平日夜がそのまま使えます |
| バンコク ジャカルタ | -2時間 | 19時 | ◎ 平日夜がそのまま使えます |
| シドニー | +1時間 (夏時間は+2時間) | 16時 | ◎ 日本の夕方が使えます |
| ドバイ | -5時間 | 22時 | ○ 日本の夜遅めなら可能です |
| ロンドン | -9時間 (夏時間は-8時間) | 翌2時 | △ 平日は難しく週末向きです |
| パリ フランクフルト | -8時間 (夏時間は-7時間) | 翌1時 | △ 平日は難しく週末向きです |
| ニューヨーク | -14時間 (夏時間は-13時間) | 翌7時 | ◎ 日本の早朝がぴったり合います |
| ロサンゼルス | -17時間 (夏時間は-16時間) | 翌10時 | ○ 日本の午前が使えます |
※日本標準時を基準にした計算です。多くの国では3月〜10月ごろに夏時間(サマータイム)が入り、時差が1時間縮まります。切り替え時期は国によって違うため、開始前に必ず確認してください。
地域ごとの現実的な進め方
アジア圏|いちばん条件がよい
時差が1〜2時間しかないため、日本国内の生徒とまったく同じ時間帯で受けられます。曜日や回数の調整も自由がききます。
北米|日本の早朝が狙い目
日本時間の朝7時は、ニューヨークの前日17時、ロサンゼルスの前日14時です。現地の放課後と日本の早朝がきれいに重なるため、実は最も相性がよい地域のひとつです。
欧州|週末を軸に組む
平日は現地の放課後が日本の深夜にあたるため、無理に平日で組むと続きません。土日の日本時間の午前〜昼(現地の早朝〜午前)に寄せるのが現実的です。
中東・オセアニア|時間の幅がある
ドバイは日本の夜遅め、シドニーは日本の夕方が使えます。どちらも平日に組み込める範囲です。
申し込む前に必ず確認したいこと
指導する側が対応できる時間帯は、会社や講師によって異なります。「日本時間の早朝6〜8時に対応できますか」「土日の午前は可能ですか」と、具体的な時刻で聞いてください。「海外対応可」と書かれていても、実際に押さえられる枠があるかは別の話です。
帰国のタイミング別・いまやるべきこと
帰国まで何年あるかで、優先すべきことは変わります。
帰国まで3年以上ある
受験対策より日本語の読み書きと算数・数学の土台を優先します。とくに算数は積み上げ式なので、割合・比・速さでつまずくと、その後がすべて止まります。週1回でも継続することが、後で効いてきます。
帰国まで1〜2年
志望校の候補を挙げ、帰国子女枠を使うのか、一般入試で受けるのかを決める時期です。ここから逆算して、埋めるべき単元を絞り込みます。
帰国まで1年以内
過去問に着手します。日本の入試特有の出題形式(記述量、時間配分、答案の書き方)に慣れる時間が必要です。学力そのものより形式への不慣れで失点することが多いためです。
すでに帰国した
まず現在の学年の内容と、実際に理解できている範囲のズレを測ります。学年を戻すことに抵抗を感じる方が多いのですが、戻ったほうが結果的に速いケースがほとんどです。
帰国子女枠を使うかどうかの考え方
帰国子女枠(帰国生入試)の出願資格は、学校ごとに大きく異なります。一般的には「海外在住年数」と「帰国してからの経過年数」の2つが条件になり、海外在住1年以上とする学校もあれば、3年以上を求める学校もあります。英語の資格を要件に加える学校もあります。
ここでの注意
条件は学校ごとに異なり、年度によって変更されることもあります。必ず志望校の公式の募集要項でご確認ください。ネット上の一覧表は古くなっていることがあります。
帰国枠が「有利」とは限りません
帰国枠は募集人数が少なく、英語力の高い受験生が集まるため、一般入試より競争が厳しくなる学校もあります。「枠があるから安心」ではなく、一般入試と両方を比べたうえで有利なほうを選ぶのが正しい考え方です。
オンライン家庭教師が向くご家庭・向かないご家庭
向いています
・特定の科目だけ穴を埋めたい
・補習校と併用して負担を増やしたくない
・帰国後の受験校が決まっている、または決めたい
・日本の教科書やワークを手元に持っている
・現地の学習も忙しく、まとまった時間が取りにくい
向いていません
・日本語での会話自体が難しい段階
・受講できる時間帯を家庭側で固定できない
・週1回の授業だけで劇的な変化を期待している
・現地の学習にすでに手一杯で、宿題を出す余地がない
とくに「日本語での会話がまだ難しい段階」の場合は、教科指導より先に日本語そのものの支援が必要です。順番を間違えると、どちらも中途半端になります。
保護者がやりがちな3つの失敗
① 現地の学習と日本の学習を、両方100%やらせようとする
時間は有限です。両方を完璧にしようとすると、子どもが先に潰れます。日本の学習は「帰国後に困らない最低限」に絞ると決めたほうが、結果的に続きます。
② 学年どおりの内容にこだわる
海外にいる期間が長いほど、学年と実際の理解にはズレが出ます。これは普通のことです。学年を基準にせず、「どこまで自力で解けるか」を基準に戻してください。
③ 帰国直前になってから慌てて始める
算数・数学は積み上げ式なので、半年で数年分の穴は埋まりません。帰国が決まっていなくても、週1回でも継続しておくことが最大の保険になります。
よくあるご質問
Q. 通信環境が不安定な国でも受けられますか?
映像が乱れても、音声と画面共有が保てれば指導は成立します。ただし体験の際に、実際に使う回線・時間帯でつないで確認しておくことをおすすめします。夜間に混雑する地域もあります。
Q. 日本の教材は手元にありませんが大丈夫ですか?
画面共有で進める方法もありますが、書き込みながら解く経験は学力に直結します。一時帰国のタイミングでまとめて購入するか、電子版が使える教材を選ぶとよいです。
Q. 英語で受けている科目(数学・理科)は日本語に置き換えられますか?
内容を理解していれば、用語を日本語に置き換える作業自体はそれほど時間がかかりません。むしろ日本の入試特有の解答の書き方に慣れることのほうが重要です。
Q. 週1回で足りますか?
目的によります。現状維持なら週1回、帰国後の受験を見据えて穴を埋めるなら週2回が目安です。ただし授業時間より、授業以外の6日間に何をやるかのほうが結果を左右します。
Q. 時差の関係で、決まった曜日に受けられません
毎週同じ時間に固定できない場合は、隔週や月ごとの調整に対応できるかを事前に確認してください。固定制のみの会社もあります。
まとめ
この記事の要点
・アジア圏は日本の平日夜がそのまま使える
・北米は日本の早朝が現地の夕方にあたり、相性がよい
・欧州は週末を軸に組むのが現実的
・補習校は続けたまま、足りない部分だけを個別に補う
・帰国が決まっていなくても、週1回の継続が最大の保険になる
海外にいる期間は、お子さまにとって代えがたい経験です。日本の学習は「取り戻す」ものではなく、帰国後に選択肢を狭めないための準備と考えると、必要な量が見えてきます。
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